KANZOに聴け

内村鑑三翁が生きていたら何を考え何を語るのだろう…

それでもトランプに委ねるという愚

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 森本あんり氏(国際基督教大学)は、アメリカという国の”精神の塊り”に関して『反知性主義』(新潮選書、2015)という本を著している。森本氏はアメリカの一つの宗教的伝統としての福音派キリスト教徒のことについて記しながら、アメリカ人に巣食っている精神の塊りとしての「反知性主義」という感情的で肉体的な感情をもとに判断する思想の歴史的起源と推移について触れている。とりわけアメリカにおける反知性主義の伝統は、創生神話をもたない新しい国アメリカならではの健全な民主主義の一要素としても考えられていて、知性(知的集団)とエリート(establishment)と政治権力が結びつくことによる危険性に対する”大衆の反感”が根底にあることを分析しつつ、アメリカ最大の信者数を有する福音派キリスト教徒の人たちが「反知性主義」と称される思想を支持する人たちの層と一致するとしている。

森本氏は遠回しにこの「反知性主義」がトランプを選ぶ素地にあったことを認めている。なるほどこんな分析や考え方もあるのだった。

アメリ福音派の数十万人もが集まる集会の模様をTVで見たことがある。大群衆が大音響の音楽に歌い踊る熱狂の様にワタシは啞然としたものだ。

 

アメリカのあの「華氏119」の映画監督マイケル・ムーア氏が、大統領選挙の前2016年7月に「ドナルド・トランプが当選する5つの理由」という記事で、次のように述べていたという。「この浅ましくて無知で危険な、パートタイムのクラウン(道化師)兼フルタイムのソシオパス(社会病質者)は米国の次期大統領になるだろう。さあ、みんな、“トランプ大統領”と言ってみよう。これから4年間そう呼ぶことになるのだから」。マイケル・ムーア氏はまるで預言者のようだ。

 

ドイツの首相アンゲラ・メルケル氏は政敵の一人が次の首相になるとしたらどのようなアドバイスをしますかという質問に対して、このように返答したという。「痛きに先だつのは驕(おご)り、つまづきに先立つのは高慢な霊」(※ルター訳聖書、箴言16:18)、(アンゲラ・メルケル松永美穂訳:わたしの信仰 キリスト者として行動する.新教出版社、2018) つまり「驕りの心で臨めば失政が待つぞ、高慢な心で臨めばつまづくぞ」というわけだ。EUで面目躍如たるメルケル氏が訪米したとき、握手のためにメルケル氏が差し出した手をトランプが外した映像を見たことがある。トランプは幼児のようだった。大国のリーダーにも見識・器量・資質・才能・責任意識には大きな落差があるのに驚愕する。

 

日本の内閣総理大臣以下官房長官閣僚らについてはどうかって? これらは理念の脱落した腑抜けた輩なので、語るのも憚られる。

 

「人間には、病的な権威によって確立された非人道的な規則に従う傾向があることは、いくら強調してもし過ぎることはない。」(エリザベス・ミカ:バンディ・リー本、p.289)

恐ろしい予感がする。何とかしなければ。 (アメリカとトランプの項終わり)