KANZOに聴け

内村鑑三翁が生きていたら何を考え何を語るのだろう…

正邪の判定は曇らせるな

前回の一文は足尾鉱毒事件が進行しつつあった時点で、田中正造翁が不当に収監されたことに関して内村鑑三翁が異議申し立てすべく執筆された。近代化を急ぐ明治政府の尖兵となって古河は足尾銅山を開発した。古河は財を成し政府の覚えよく叙位され放蕩の限り…

鑑三翁と正造翁が共鳴を起こす

明治に田中正造翁がいたことを記したが、もう一人の巨星がいる。わが愛する内村鑑三翁である。内村鑑三翁は万延2年生まれで明治大正昭和にかけて活動し昭和5年に70歳で亡くなるまで、生涯キリスト者として日本の思想界のみならずわが国に多大な影響を与えた…

闇の宿痾(しゅくあ)が続く

足尾鉱毒事件の経緯は、水俣病事件の経緯と同類である。国・政府・官僚・直接加害者の企業また司法までがタッグを組んで、医学的にも明らかにされた一連の瑕疵を認めず、手前たちの利益を協働して守ろうとする姿勢はしたたかで強靭なものだった。その過程で…

明治に田中正造翁あり

2018年は明治改元から150年の節目の年で当時のアベ首相は憲政記念館で記念式典を開いた。この首相が憲政記念館で明治改元の式典を開いたのには、何か意図があったのだろうか。魚の骨がノドに刺さって不快なように以前から気になって仕方なかった。憲政記念館…

司法世界の異様/奇怪

2020年9月21日の東京新聞では、大阪地検特捜部の検事による証拠改ざん発覚から10年が経過したことから、冤罪に巻き込まれた元厚生労働次官の村木敦子さんの取材記事を取り上げている。新聞のタイトルは村木さんの発言「検察は権力を抑制的に」として、その後…

小事善大事悪;キモの小さなニッポン人

私が敬愛する内村鑑三翁は、明治・大正・昭和と生きた言論人にして基督者として知られている。翁の社会に対する発言の的確さと鋭さには驚嘆すべきものがある。これらの発言は、藩閥政治や政界・政治家、教育界・教育者、新聞界・新聞人、出版界、宗教界・宗…

空無の愚王を生む社会 

M.ピカートは1888年スイス生まれの医師にして20世紀を代表する思想家。日本でも『沈黙の世界』『神よりの逃走』、そしてここで取り上げた『われわれ自身のなかのヒトラー』(いずれもみすず書房刊)などの翻訳書がある。ワタシはピカートの鋭い分析力と公正な…

嘘と不正を繰り返す人って‥

アベ首相が20年8月下旬退陣を示唆した。本人の記者会見では持病の悪化が政治判断を過つので‥と言っていたが、主治医がいる慶応義塾大学病院の医師らは「虚偽だ、詐病だ」とコメントしているらしい。息を吐くように嘘をつく人間は、この期に至ってもなお嘘を…

馬鹿の政治

「馬鹿」は使い方によっては差別用語ともなるだろう。だが待てよ。永六輔が法律で尺貫法を用いることを禁止したことを受けて、尺貫法の復権運動を展開したことがある。だって落語で熊さん八つぁんの住む「間口九尺の長屋…」を「間口2.7メートルの…」としたら…

ニッポン国の荒みと滅びの予感

アベ首相が退陣を表明した直後に通信社TV企業新聞社の世論調査が行われ、俄然内閣支持率が急上昇したとの報道。この支持率の急上昇には、世論調査自体の愚かなカラクリがあるとしても、これはワタシは深刻な現象であると考えている。なぜ深刻なのか‥。明治の…

偽りに偽りを積み重ねた果てに‥

20年8月下旬アベ首相が退陣を示唆する記者会見を行った。在任7年8か月は歴代内閣でも最長不倒距離らしい。ご本人は歴史に残る記録と自慢げだったが”別に‥それがどうした”との感を持つ人も極めて多いだろう。この国の内閣総理大臣を何年やったということより…

不起立は後世への最大遺物 

この君が代最高裁判決を知って、ワタシは明治の気骨の言論人・内村鑑三翁の不敬事件を思い起こした。 鑑三翁は明治24(1891)年、当時勤務していた第一高等学校教育勅語奉読式典で、天皇真筆に奉拝(最敬礼)を為さなかった故に、同僚教師や生徒によって批難され…

校歌歌わず君が代斉唱の珍奇

新型コロナウイルス感染拡大中の20年3月、東京都立学校全ての卒業式で「君が代」が斉唱されていた。全国一斉休校となり飛沫感染を懸念する学校で、合唱歌や校歌も歌わず卒業証書を手渡す際にも生徒の名前を読み上げることもしない中で、何故「君が代」が歌わ…

妻は安楽死を望んだか‥

こうした「日本人」であるので、独立した思考で真に自らの問題意識と覚悟をもって「安楽死」法を深く考える人が多く出てくるとは思われない‥ワタシはそう思う。オランダやスイスが法律を制定したのでこれに倣って法律を制定するのが先進国の姿だ、と宣う法律…

無宗教の民の不実

あれほどの長い期間をかけて検討されたいわゆる「臓器移植法」が1997年に制定されて以後、日本人の臓器提供者は西欧に比較すれば極小で推移していることを考えてみたらいい。「臓器」の「移植」は日本人の「性分」にそぐわないのかもしれない。神から与えら…

盪(とろ)い日本人

そこへいくと日本人はどうだろう。どこにでも山から水は流れ作物は豊かに実り、自然環境は豊かで四季があり、山川草木の恩恵にあずかることが出来た幸福な民族である。自然の中の木々や山や岩に宿る八百万の神が信仰の対象となってきた。いつでもどこでも安…

深遠が深遠に応える

人間の生死は未来に向けての航海のようなものだ。停泊地は定まってはいないのに無理に停泊地を選択せよと迫るのが「安楽死」の法制化である。人生には愉しみが限りなくあるし哀しみ苦しみも限りなくあるけれども、法律によってこれらがすべて規制され選択肢…

「安楽死」を弄ぶな‥

ALSの患者さんが主治医でもない二人の医師に”安楽死”を依頼して実行した。二人の医師はその後逮捕された。2020年7月のことである。この患者さんはSNSで一人の医師と出遭い、この医師につながるもう一人の医師とタッグを組んで実行したようだ。 過去の判例(名…

またそのハナシですか‥   

またそのハナシですか…老者はなぜ同じことを繰り返し話すのだろう。こう言うワタシもそのうちの一人だと自認している。いつも嫁さんに「また同じ話をして、その話は何度も聞いたわよ」と言われている。実はこのことは気づいてはいるのだが話題が少ないので「…

老者叛逆す!

ワタシは「優性思想」「安楽死」「尊厳死」「法制化」と書いたが、時間軸としてはそれほど遠くはない時点で、老者の生死はこのような”思想”に左右されるときが来ると危惧している。 近い将来こんな社会がいずれ到来するだろう‥‥老者は昼間歩くのを禁じられ交…

老者の万引き考

『蕨野行』では若い人たちで構成される社会から老者は放逐される。その村での役割は終えたし老者が社会的に機能する場は失われている。農作業する体力も失われたし「ボケ」(日本では放送禁止用語!)てきたし、歩行など日常生活動作も覚束なくなってきて家族…

老者自立す!  

ワタシの母は亡くなる前年白寿のお祝いの賞状と記念品を県知事からもらった。でもこのような行事がいつまで続くのだろうか、それほど遠くはない時期に廃止されるだろうか、いや行政は一応「長寿はめでたい」のフリをしていなくてはならないから廃止されない…

「美しく老いる」なんてくそくらえ! ‥シャバよサラバ!

娑婆は邪悪と狡猾と猜疑と妬みに満ちている。喧噪と猥雑そのままだし何が正で何が邪かも皆目判然としなくなってきた。ニッポン国アベスガアソウらの漕いでいる泥船政権では、邪を正と言い続け嘘にウソを重ねて幾年月、邪も正であると言い続け暗愚の殿の取り…

《老い》楽な暮らしを皆で考えよう

浜田晋先生の著書から私の心に残った文章を抜き書きする(出典は先述の書/浜田晋:老いを生きる意味.岩波書店、1990)。 優れた医師は患者との往還の中で確かめ得た事象を、簡潔で含蓄のある文章として成すものだ。それらは時には諧謔を盛り時には濃い哀惜の…

あなたはどなた様ですか?   

岸川雄介医師が記すように、認知症の患者は‥道に迷ってしまい、それでも目的地にたどり着こうとし、探している人に会おう、今いる場所がどんな場所かつかみ取ろうと、それぞれの目的を果たすべく懸命に行動しているのだ。だから認知症の患者はその人ならでは…

認知症の症状群8つ

認知症の専門医・岸川雄介医師(現在安曇野ななき診療所院長)は、脳の機能低下と関連する認知症の症状群として次の8つをあげている。認知症に関してこのように簡明に整理された文献をワタシは見たことがない。岸川医師の長い診療経験と医哲学に裏付けられてい…

認知症‥スティグマによる疎外

「私は精神科医になってからずっと「分裂病」(注:現在では統合失調症)を追い続けてきた。それは「社会への入口」の病いである。社会に参加しようとして参加できず、やがて「病い」へと追い込まれる。「老いの病い」は、社会からの出口の病いである。そして…

認知症は初体験のことばかり‥

「日本の認知症患者の割合(有病率)はOECD(経済協力開発機構)加盟35か国の中で最も高く、日本の人口に対する認知症有病率は2.33%で、OECD平均(1.48%)を大きく上回り最も高かった。2位はイタリアの2.25%、3位はドイツの2.02%。日本の有病率は20年後…

本来の「人間」に戻るかなしみ   

先述の浜田晋医師は1926年高知生、東北大学医学部を卒業して東大医学部精神神経科、都立松沢病院勤務を経て1974年上野に浜田クリニックを開院、町医者に徹して東京下町の上野界隈の地域の人たちの診療にあたってきた(2010年逝去)。 浜田医師がかつて書いた『…

認知症の人‥今日も50人が行方知れず

コロナコロナで大騒ぎになっているさ中に認知症の人の行方不明者に関する報道があった。「2019年中に認知症やその疑いで行方不明となり警察に届け出があったのは、前年より552人増の1万7479人だったことが2日、警察庁の集計で分かった。12年の統計開始から毎…