KANZOに聴け

内村鑑三翁が生きていたら何を考え何を語るのだろう…

トランプ・エフェクト―悪性感染症の伝播

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アメリカ人の集団的精神がトランプを生む(大統領に選出される)下地となっているという考え方はワタシにも理解できた。だが一方でアメリカの民主共和の二大政党政治体制や選挙プロセスにも問題はあるのだろう。トランプが大統領選で獲得した選挙人は304人、敗れたクリントンは227人、ところが総得票数ではこれが逆になり、クリントンが48.1%、トランプは46.0%で、クリントンが286万票多かったのだ。この総得票数についても、トランプは選挙妨害かフェイクであると語った。

選挙の総得票数と選出された議員数が整合しないことについては、日本でも同様の現象が起きている。民主主義を尊ぶという精神に立つとすれば、選挙区制度そのものの議論が日本でも真摯に検討されるべきなのだけれど、日本の現今の政治風のもとでは困難だろう。 

トランプが「アメリカの新聞TV報道はすべてフェイクだ!」、「大統領選挙へのロシア介入など無かった、報道は陰謀だ!ウソだ!」、「ヤツは法螺吹きで誠意がなく噓つきだ!」と毎日早朝から夜中までツイッターで速射砲のようにひたすら連呼し続けると、それを聞いている者たちは、”ひょっとすると報道はトランプが言うようにフェイクかもしれないな”とか、”ロシアとは何もなかったのかもしれないな”と思い始めてしまうものだ。哀しいながら人間とはそういうものだ。そして飽き飽きしながらもこう考え始める”何しろ彼は国を代表する大統領なのだからね、ウソを延々と言い続けるはずはないよ”…と。 

また新聞TV議会も、本件を連日のように様々な角度から取り上げるたびに、「問題はありません」「そういう事実は確認されませんでした」「誠心誠意答えております」とトランプ代弁報道官(日本ではなぜか薄汚れて貧相で詭弁が得意の官房長官)が繰り返し繰り返し返答すると、攻撃する野党も報道記者も取りつく島もなくなってノレンに何とやらという具合で、嫌気に襲われてしまう…人間(社会)とはオカシなものである。 

ウソという盤石な防禦壁を固めで敵が嫌気さすのを待つ・愚民は七十五日も経てば忘れるよ、とばかりベロを出しながら文字通りの女房連れての外遊ゴルフ三昧…あぁ、この映像は、日本国でも全く同様だったな、あのモリカケ。 

バンディ・リー本では、「トランプ・エフェクト」として一項目をさいて、トランプの行為・言動の「邪悪」「ルール無視」「差別」「嘘」…といった「反道徳・非道徳」が、社会に酷い悪影響を及ぼしつつある事実を多くの寄稿で明らかにしている。トランプはアメリカ社会の中に、道徳頽廃という悪しき感染症をじわじわと伝播させつつある。 

このことはそのまま日本の政治世界で現行内閣総理大臣官房長官閣僚らの言動と見事に一致していて、恐らくは総理大臣官房長官以下の輩は、”あの大国アメリカの大統領が堂々とやっているのだから、オレたちにできないことはない”と“トランプに勇気づけられて”やっているに相違ない。核も傘の下、非道徳・反道徳もトランプの傘の下、というわけだ。まさしく日本への「トランプ・エフェクト」である。そして日本でも、「反道徳・非道徳」の悪しき感染症が底流となって伝播しつつある。