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内村鑑三翁が生きていたら何を考え何を語るのだろう…

認知症の症状群8つ

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認知症の専門医・岸川雄介医師(現在安曇野ななき診療所院長)は、脳の機能低下と関連する認知症の症状群として次の8つをあげている。認知症に関してこのように簡明に整理された文献をワタシは見たことがない。岸川医師の長い診療経験と医哲学に裏付けられているからだろう。

(1)間違いに気づかない(自覚の障がい)、(2)注意力の低下・軽い意識混濁、(3)知覚機能の低下(嗅覚、味覚、触覚、痛覚、温度覚等)、(4)記憶力障がい(予定、道順、出来事、作業、手続き、感情、生活の流れ等)、(5)道具を使うことの障がい、(6)遂行機能障がい(目的の作業をやり遂げられない)、(7)言語機能障がい(言葉を話す、聞いて理解する)、(8)睡眠障がい―以上の8つである(要約)。(篠崎英夫:精神保健学序説.第4章認知症患者への総合的アプローチ、pp.162-82)

岸川医師は、認知症研究と臨床診療のためにアメリカに留学し、帰国後認知症専門医として多くの患者の診療にあたってきた医師。彼は多くの認知症患者の診療経験から次のように記す。「…あてもなく徘徊しているアルツハイマー病の方を私は診たことがありません。いくら脳の機能が低下しても、人間はそんな単純なものではない。道に迷ってしまい、それでも目的地にたどり着こうとし、探している人に会おう、今いる場所がどんな場所かつかみ取ろうと、それぞれの目的を果たすべく懸命に行動しているのです。」(篠崎英夫:前掲書、p.150)

ワタシはこの一文を読んで胸が詰まった。ワタシの義母のことを思い起こしたからだ。義母は白寿直前に天寿を全うできたのだが、保健師を定年退官した後に父(義父)が亡くなり、山形市の家で一人暮らしをしていた際の一時期に認知症の症状が出たことがあった。東京からかけつけたワタシと妻にショートステイを頼んだ施設の看護師さんからの説明は次のようなものだった。「時々徘徊をする」「時々入浴時に便をもらし便こねをする」「時々職員に向かって、あなたはだれですか、と言う」。ところが不思議なことにこれらの症状は半年ほどで消えていった。なぜ認知症の症状が一過性のものであったのか、施設の医療者たちも不思議がっていた。

そんな義母に対して、ワタシや妻はどのように接していいのか戸惑うばかりだったが、おそらくショートステイの職員の人たちが適切な対応をとり症状も軽快していったのではないかと思う。よき介護職員に出会えること、愛情の豊かな家族に恵まれること…これらが認知症患者の日常を左右することは間違いない。

人は生きたように老い死ぬる‥ワタシはギクッとしつつこれからもっと家族を大事にしなければなぁ、と思いつつ、既に時遅しとも思う昨今。