KANZOに聴け

内村鑑三翁が生きていたら何を考え何を語るのだろう…

毒を食ったら皿まで!

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アベ首相夫人が名誉校長として深く関与した小学校への国有地払い下げが国会で問題となり、その追究が続く中でこの事案に関係する関係文書の改竄が明らかになった。そしてこれに関与した近畿財務局職員が自ら命を絶ったのは2018年3月7日。彼の遺書が2020年3月に発行された「週刊文春」でついに遺族の意思で全文が公表された。この中では「財務省が真実に反する虚偽の答弁を貫いている」「最後は下部がしっぽを切られる」といった事実の経緯が明らかになった。

この問題では「私が関係したことが明確になれば私は総理大臣を辞する」とタンカを切ったことが実は財務局職員の自死につながっていったわけだが、このことを国会で追及され続けたアベ(及びアソウ)は何故か居座り続けた。その間一連の事案への関与をひたすら否定し続けた。嘘を連発し嘘の上塗りを重ね「毒食わば皿まで」の醜態をさらし続けた。そしてアベ(及びアソウ)は逃げおおせたと安堵していたに違いない。 

この事件の全体経緯を見ていると、アメリカ・トランプ大統領の道徳破壊の推移にも似ている。アベは明らかにトランプ・エフェクト下に、今もある(ワタシのブログ『KANZOに聴け』「トランプ・エフェクト―悪性感染症の伝播」190526参照)。つまり大国アメリカのトランプでさえ、精神医学者の多くから病的性格者(ワタシのブログ「精神医学者たちが下した恐ろしい”診断”」20190523参照)だと言われ、あれほど大胆に道徳破壊をやってのけているのだから、オレにもできないことはないと、アベはトランプに諂いつつ見習おうとしてきた。だからトランプが下野すれは、アベはたちまち自信喪失者となり下野するに違いない。必ず彼は抜け殻となり精神に異常をきたすだろう。

アベがトランプ・エフェクト下にあることで、アベ・アソウ・スガらの内閣及びこれに追従する官僚らの集合体による道徳破壊が鮮明だ。アメリカ・トランプ同様、ここまで人倫を完全に喪失した政治指導者をいただくこの国の不幸は続いている。 

昨年亡くなった橋本治は、「父権制の崩壊―あるいは指導者はもう来ない」(朝日新書、2019.4)の中でつぎのように記す。人倫喪失とはやや異なる視点だ。

「もちろん彼(※アベ首相)は、森友学園加計学園に対する自身の妻の関与に関して、説明することが出来ない。どうしてかと言えば、大阪の森友学園に対する国有地払い下げに関して、法外とも言える値引きがあり、「そこには首相夫人安倍昭恵が一枚噛んでいるのではないか?」という疑惑が国会で取り上げられた時、「そんなことがあったら、私は総理大臣も政治家もやめますよ」と大見得を切ってしまった。さすがに総理大臣で、「何を辞める」を明確にすることは忘れなかったが、これ以後、この件に関して何を問われても、「知らない、その事実はない。関係がない。”ない”ということを証明しろと言われても、”ないこと”は証明できないのです」と、高級なことを教えてくれるに止まった。下手に突っ込まれたらやばくなるから、絶対にその(・・)件(・)に関しては触れないという戦法で、これを日本ボクシング連盟会長の言葉に翻訳すると、「みんな嘘」になってしまう。「みんな嘘」なのだから、一々の疑惑について反証する必要はない――そういうすごい展開ですわね。ああ、哀れ日本!」(第5章父権性の亡霊、p.180)

政治家には生来の人たらしや嘘つきも多い。たまたま親も政治家だったので何となく政治家になったという輩が多くなったので、日本の政治家もスケールが矮小化し、アベのような訳のわからない腑抜けた政治家が発言力を持つようになった。その裏では手前に歯向かう者の弱みを握り、恫喝し孤立させて干すという手法を用いる、そして落伍させる、さらに周辺に諂い者を置いて優遇する、官僚も同様な手段で人事考課を行い誑かす、マスコミ経営幹部と官房機密費で毎晩メシを食い、ニュースソースはメシを食った幹部のいる特定のマスコミにだけ流し、彼らを取り込む‥‥これらはアベ政権になって特に突出している手法だ。金と力には人間は弱い。このことをよくわかっている。というよりこんな手を用いるしか手立てがない政治を行っている。

背中から切り付けることで知られるスガ官房長官もアベと不即不離で脇を固める。取り巻きの官房副長官も悪代官の如く最長不倒の長期間居座り続け、秘書官もガキのように無知で不見識な腹心として都合の悪いことは隠蔽してアベにご進講・進言する。そしてここでいじましいマスク2枚とか、解の無いパズルのような国民への給付金が政策らしき顔をして国会の場に上がるのだ。実に不思議な不気味な奇妙奇天烈な光景である。

だが少し待てよ、そもそもアベらを選挙で支持するニッポン国民が、アベの道徳喪失政治を支持しているのだ。だからワタシも橋本治のように「ああ、哀れ日本!」と叫びたくなる。

内田樹は「嘘をつくことに心理的抵抗のない人物、明らかな失敗であっても決しておのれの非を認めない人物が久しく総理大臣の職位にあって、次第に独裁的な権限を有するに至っていることを座視している日本の有権者たちのほうです。いったい何を根拠に、それほど無防備で楽観的にしていられるのか。僕にはこちらのほうが理解が難しい。」と語る(望月衣塑子&特別取材班:「安倍晋三」大研究.P.209、KKベストセラーズ、2019)