KANZOに聴け

内村鑑三翁が生きていたら何を考え何を語るのだろう…

後ろめたさなくば堂々と国連に返事を返せ!

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内村鑑三翁は日記に記す。国による言論統制の話だ。

「(1919年)3月15日(土)大雨 警視庁に呼出され三月号雑誌の記事に就て注意を受けた、「聖書と現世」の一欄時事に触れるの虞れありとの事であった、謹んで御注意に順ひ此欄を廃することに決定(きめ)た、永遠の聖書を研究せんと欲する者が必しも時事に就て語るの必要はない、」(内村鑑三全集33、p.84、日記)

「(1919年)4月11日(金)晴 北風にて寒し、山岸(※壬五)と共に警視庁に往き『聖書之研究』に於て時事問題を論じ得るの権利を得んがために保証金として千円を納め其手続を了(おわ)った、斯くして爾今本誌に於て国際聯盟、平和会議、世界改造等を論ずるも法律に触れるの虞れなきに至ったのである、我等は此世の事に就て論じたくはない、然れども来らんとする神の国に就て論議するに方(あたっ)て時には此世に就て語るの必要がある、預言は神と信者の立場より見たる人類の歴史である、故に預言研究に従事するに方て時事問題を避くることは出来ない、新聞紙法に順て本誌を発行するの必要は茲に在る、実に止むを得ないのである。」(同書、p.95)

3月に警視庁に呼び出され、自らが編集発行している『聖書之研究』誌に鑑三翁が執筆した記事について注意を受けた。一旦は引き下がったものの、時事問題を離れて鑑三翁の無教会信仰の宣教や聖書研究の目的は果たせないと悟ったので、鑑三翁は警視庁に出向き、時事問題を論ずるための許可を得るために千円という当時では大金を支払っている。警視庁は国や政府の批判はするな、為したら捕縛するのを覚悟しろ、その約束のための保証金を納めろ、というわけだ。鑑三翁はこのときオトナの対応をした。不敬事件と言われる災厄に遭遇した頃の若き内村鑑三であったら、このようには対応しなかったのではないか。

この鑑三翁の日記を読んで、往時の言論統制は実に淫靡に他方では実に直截的に行われていたことがわかる。この鑑三翁の日記を引用したのは、今日日ワタシが生活しているこの国でも、実に淫靡に巧みに言論統制が為されていると考えるからだ。その具体例はまた別の日に書く。

国際連合は、言論と表現の自由に関して、日本政府への大きな懸念を示す報告書をまとめた。国連のこの特別報告書は2019年6月24日の国連人権理事会に提出されるという。国連の特別報告書とはいえ日本の言論と表現の自由への危惧に関して、極めて重要な指摘を行っていると思われる。報告書の要点を記事から引用させていただく(「東京新聞」2019年6月5日)。

言論と表現の自由に関する国連のデービッド・ケイ特別報告者が、日本では現在もメディアの独立性に懸念が残るとする新たな報告書をまとめたことが四日分かった。日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性があるとして同法の改正や放送法四条の廃止を求めた二〇一七年の勧告を、日本政府がほとんど履行していないと批判している。報告書は六月二十四日開幕の国連人権理事会に正式に提出される予定。報告書によると、日本政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法四条は効力を持ち続けており、事実上、放送局への規制になっていると指摘。政府に批判的なジャーナリストらへの当局者による非難も「新聞や雑誌の編集上の圧力」と言えるとした。「政府はジャーナリストが批判的な記事を書いても非難は控えるべきだ」としている。ケイ氏は一七年に公表した対日調査報告書で、日本政府に十一項目を勧告。勧告に法的拘束力はないが、政府は不正確な情報に基づくと反論していた。ケイ氏は調査の結果、九項目が履行されていないとしている。(※以下略)

このように前置きした上で、「勧告11項目と日本政府の履行状況」及び「沖縄県辺野古移設への抗議活動への圧力批判」を報告している。この報告書に関しては日本政府からの回答・コメントは無かったという。この報告書には法的拘束力はないので、無回答は現行政権の常套手段だから当然か。

この国連の報告書に関する官房長官スガの記者会見の映像を見た。国連には無回答を決め込むが、内向きの政府だから記者会見程度はできる。報道記者たちの懐柔も完了している。最近の記者は「記者会見で言われたことを書くのが報道」と考えているし、記者会見では入社何年かの若年記者が大半で、痛烈なやりとりはなく凡庸な質疑に終始するのが定例だ。

ノミよりも小心なくせに無理して平然さを取り繕っているので、いつも木彫りの能面のような表情のこの官房長官は、言葉少なく”抗議をした”とか何とか、モゴモゴと口ぶりまで覚束ない。「令和オジサン」(これも大手広告代理店の仕込み)とか何とか言われているが、その実像は怖い、寝技とチクリが得意技で陰湿、背後から切りつけるのを常とする、内閣府の役人数百人をフル稼働させて、新聞記者はじめジャーナリスト、学者、与野党問わず政治家の尾行と情報収集を得意とする、恫喝と裏取引のために。官房機密費も遣い放題で敵対者の懐柔には札ビラを切る。

しかし海を越えて晴天の空から降ってきた斯様な指弾にはスガは悶々とするしかない、選挙の前にヤバいな…、内閣府の役人たちも手の届かないところから発せられた矢玉だからな…、ここは毎度の如く木で鼻を括ろう、逃げるに如くはなしだ、とこの男は思案している。